(こいつ……。見かけと違って、淫乱だな……?
いや、何か魔法的な力か? どっちにしろ、俺のブツを見てるだけで
もう濡れてやがる……)
獣人は舌なめずりして、りつこの身体を見やる。
そのブレイザータイプの制服に押し込まれた、はちきれそうなほどの膨らみが、
ますますオスの本能を刺激する。
しかし、同時に、
(こいつが十中八九、俺の心を読めているというのが問題だな……。)
そして、マジックアイテムが伝えてくる、獲物の情報を元にして
りつこの言葉を読み解いていく。
(避妊魔法……ってのは事実か。とっさのハッタリかと読んだが意外だな。
だが、こっちの手の内が筒抜けってのはヤバすぎる)
エクスは、この危険なダンジョンで数々の獲物を狩ってきた。
それだけに、生き残る術にも長けていた。
(とりあえず、嘘はつかないほうがいいな……。)
そう思ったら、即言動だった。
長期戦向きな能力な故に身についた話術に切り替える。
「はあ……。さすがは卒業試験にここに来るだけはある……か……。」
「え?」
りつこは突然の言葉に、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに身を引き締めた。
「お前。俺の心読めてるんだろ?魔術師系はこれだから戦いにくいんだよ。」
エクスはとりあえず思ったままのことを口にした。何度も死線を潜り抜けた
自分だから言える真実を。
「変な魔法で動き封じたり眠らされたり……氷漬けになった時には死ぬかと思ったぜ。」
予想外の獣人言葉にりつこの困惑は、より大きくなっていく。
(嘘は……ついて無いようですけど……)
それを見抜いているエクスはたたみかける。
何気ないことだが、本人も自覚のない話術は、その真意を読まれる心配はない。
「お前さんは嘘が苦手のようだからな。読心魔法もそれじゃ逆効果なんだだぜ。」
「それは、どういう……?」
「読心……。つまり、心を読めるというのはな……。」
(お前を思いっきり孕ましテェ!!!)
エクスは、突如、もっていき場のなかった劣情のたぎりを全力で
りつこの精神へと打ち込んでやる。
「くっ、うううんっ」
その瞬間、りつ子の下腹に言葉にならないほどの強烈な疼きが生まれる。
(な、なに!?)
メスとして理想的なカーブを描く
魅惑的なヒップが勝手にガクガクと揺れる隠微な光景が、
獣人の視覚をたっぷりと楽しませる。
だが、それでも彼女の意思の力は残されていた。
(くそっ、ここで、こんだけのメスに手が出せねぇとはな)
引き際を見極めるエクスに、りつこの声がせまる。
「それで……私とは戦うつもりなんですか?」
「……いや、戦わねぇよ。」
読心の能力を持つにもかかわらず、あれだけの思念をぶつけられて
なお戦意を見せるのだ。
相当な意思の固さ、そして貞操観念の強さをうかがわせた。
「ここは撤退だな」
心を読める相手には、敢えて全てをさらけ出すエクスの機転。
「俺の戦法は心を読まれるとまったく意味をなさねえもんが多いんだ。
今回のお茶もそうだし、他にもたくさんある。
俺が殺すの嫌だからってのもあるがな。」
そういって敢えて、りつこに背をむけて南の扉へとむかう。
この小娘は手強いが、自分のような暗い世界に生きる者ではない。
背後から襲ってくるようなことも無いと読み切っていた。
「とにかく、お前とはここでは戦わねえよ。」
それに、心を読まれたことで興醒めしてしまった部分も多分にあった。
(どうしても俺と居たいってなら、パーティーを組んでやってもいいが)
自嘲気味にそんな事を思った時、
「お、お断りです!」
強い言葉でりつこは否定する。
「やれやれ、そこまで読まれてるか」
そういって扉に手をかけようとした時、
(おっと)
エクスにとっては、ほんの戯れ心だった。
「戦利品だ。受け取りな。」
りつこにお茶の缶と1冊の魔法書籍を投げてよこす。
「さっき出したのと同じお茶だ。ああ、薬は入ってないから安心しろ。
俺に勝った奴には、それを毎回渡してんだ。味は保証するぜ。
それと、そっちの本は……まあ、読んでからのお楽しみだ」
そういって、エクスは南の扉を開けると、りつこの前から姿を消した。
獣人が去った扉をみつめながら、りつこは大きく息をつく。
(危なかった……わね)
自身が持つ読心の魔法の力が、
まさか自分自身をこんな危機に陥れてしまうとは、
考えてもいなかった。
「それにしても……」
エクスの残していった奇妙な戦利品を見つめる。
彼女の身につけたマジックアイテムは、
それらが毒物や呪いのアイテムではないと伝えてくる。
獣人の自慢らしいお茶、そして、もう1つの魔法書籍は……
「!!」
それを手にとったりつこは絶句する。
なぜなら、本の表紙に鮮やかに描かれた魔法写像、
そこに描かれていたのは、得体の知れない男に犯される美しい妊婦の姿だった。
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