賭博の都。
悪徳と放蕩が降り積もり、腐敗と混沌が大樹をなした都市。
この退廃と奢侈の王都を育てたのが“迷宮”だった。

かつては、堕ちたる聖王の威光を恐れられ、
今は悪意と欲望を抱卵する、目には映らぬ異界の生態系。
再び、天空に牙なす日のため微睡む、魔王の胚胞。

無知ゆえに、その深淵を恐れぬ者は、今日も地の底で蠢きつづける。
飽くなき富と栄光を夢見て。

エクス＝グラディアルは眠らない。
獣人である彼には、睡眠は不要だった。
エクス＝グラディアルは夜目が効く。
獣人である彼には、薄暗い石室内も昼間同様だった。
エクス＝グラディアルは尽きぬ精力を誇る。
より多くの子孫を残す事、それが獣人である彼の本能だった。

石室東側の扉が開く。
そこから姿を現したのは、眼鏡をかけた知的そうな少女。
しかし、その肢体は、はち切れそうなバストと魅惑的なヒップで、
彼の本能に激しく訴えかけてくる物がある。

マジックアイテムが、エクスに彼女のプロフィールを告げる。
名前は、春澤りつこ、東方の魔法学校の学生で、
このダンジョンへは卒業試験のために、やって来たという。
さらに、彼女の行動は仔細漏らさず、遠隔魔法によって
監視されている事も知る。

エクスは獣の笑みを浮かべる。
（さて、どうしてやろうか？）