賭博の都。
悪徳と放蕩が降り積もり、腐敗と混沌が大樹をなした都市。
この退廃と奢侈の王都を育てたのが“迷宮”だった。

かつては、堕ちたる聖王の威光を恐れられ、
今は悪意と欲望を抱卵する、目には映らぬ異界の生態系。
再び、天空に牙なす日のため微睡む、魔王の胚胞。

無知ゆえに、その深淵を恐れぬ者は、今日も地の底で蠢きつづける。
飽くなき富と栄光を夢見て。

ふー　ふー
薄暗い魔法照明に照らし出された石室の内側に、
ダレ・トク自身の荒い鼻息の音が響き渡る。

石室は一辺8メートルほどの正方形で、
東西南北の4方向に扉が設けられている。
こんな部屋が無数に連なり、迷宮をなしている。
それが、この賞金ダンジョンの実態だった。

「あちぃなあ」
特に温度が高いわけでもなかったが、
もともと多汗症のダレの額からは、ボタボタとしずくが垂れる。
その時、西側の扉が開くと、腰まである長い金髪が美しい、
魔術師風の少女が姿をあらわした。

弱々しい魔法照明の薄明かりの中にあってさえ、
彼女のブロンドは、きらきらと輝き彼を魅了する。
さらに、その豊かなバストは、男ならむしゃぶりつかずには、
いられないほどだった。

マジックアイテムの情報によると、彼女の名はセリア・ルーンワーク。
魔法使いとしての修行のため、このダンジョンを訪れたらしい。
ダレは、ゴクリと唾を飲み込む。
室内の気温が、さらに数度上昇したように彼には思われた。