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プリンセスブレイカーズ
ターン0 初期情報/春澤りつこ編  2010/02/05更新
賭博の都。
本当の名前は、もう誰も知らない。
その悪徳と放蕩の街、街路の喧噪の中、人並みでごったがえする大衆食堂で
テーブルを挟み2人の女性が、場違いに穏やかな昼食会を催していた。

「へえ、卒業試験ねえ」
それまで、次々とエルリナの口の中へと放り込まれていた
厚切りのステーキ肉の流れが止まる。
「あの、どうかしました?」
手を止めたエルリナの姿に、向かいで飲み物をすすっていた春澤りつこは、
不思議そうに問いかける。
「いや、東方の名門魔法学校ともなれば、卒業試験もそれくらい物…なのかな?」
何か納得しきれない様子で、エルリナは半ば自分自身に
言い聞かせるようにつぶやく。
そんな彼女の困惑を、しかし、りつこは確実に感じ取っていた。

自覚したのは、いつ頃だっただろうか?
他人の思考や意識が読める、それがりつこの能力だった。
気配が感じられるというレベルではない、明らかに明確な意志に
近い物を感じ取れるのだ。
そして、今、目の前の女性戦士エルリナから感じるのは、戸惑いと疑惑。
それまで、りつこが疑いもしなかった「卒業試験」の課題について、
初めて彼女に突きつけられた、外部からの違和感だった。
(噂には聞いていたけど、そこまで危険なダンジョンなの?)

エルリナの懸念も、まさにそこだった。
今日、初めて出会った学生服の少女。
たまたま話が弾んで昼食を共にしたが、そのふくよかな胸のボリュームが
眩しい彼女が、聞けば、自分と同じ「賞金ダンジョン」への挑戦者だという。
しかも、目的は「卒業試験」として、迷宮内から5つの「オーブ」を
持ち帰る事だという。
確かに、東方の名門魔法学校なら、そういう特殊な試験があるのかもしれない。
ただ、それにしても、あのダンジョンは危険すぎた。
目の前の少女は、おそらく性体験もない処女だろう、
しかも、育ちも良さそうな良家の子女、といった感じもする。
そんな大切な生徒を、あの危険なダンジョンに放り込んで大丈夫なのだろうか?
しかも、エルリナには知り得ない事だったが、
りつこのダンジョン内での行動は「試験判定」のため、
全て遠隔魔法で記録監視されており、彼女にはプライバシーなど
皆無の状態だったのだ。

エルリナの懸念と、りつこの疑問。
しかし、2人は明日のダンジョン内では、ライバル同士となる可能性もあった。
思いは言葉とはならず、やがてささやかな昼食会はお開きとなる。
「楽しかったよ、それじゃ、運があればまた明日な」
軽く腕を上げて別れの挨拶を告げるエルリナに、
りつこもにっこりと微笑んで返す。
「はい、楽しみにしています」
少し冷たい印象も与える、りつこの眼鏡越しの笑顔に、
意外にも、彼女がかなりの美貌の持ち主である事に、
エルリナはこの時になって、初めて気付いたのだった。


翌朝、りつこは暗い石造りの石室の入り口で、深呼吸する。
石室は、ダンジョン内部への転送門。
そこから先は、生きるか死ぬかの真剣勝負だ。
(大丈夫。これまで学んだ事を、しっかり思い出すのよ)
決意を新たにすると、彼女は闇の領域へと、その一歩を踏み出す。

プリンセスブレイカーズ
ターン0/春澤りつこ編/ダンジョン内
りつこは、深呼吸をして閉じていた目をあける。
「ここが……」
薄暗い魔法照明に照らしだされた何も無い空間。
しかし、この場所は既に、あの賞金ダンジョンの一角のはずだった。

周囲を区切るのは、一辺8メートルほどの石壁。
その3方向には、ここから出るための扉が設えられている。
包囲は、北と東と西。

「さて、どうしようかしら?」

りつこ自身は、深く意識はしていなかったが、
この時から、既に彼女への監視魔法は働きはじめている。
運命の歯車は、狂い始めた。

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行動指定
行動指針
他の人物に対する行動:協力的(魔法で下心などを感知しても
多少のことなら好意的な行動をする)
アイテム発見時:鑑定してみて明確な悪影響が発見されなけれ
ば、基本的に装備できるものはすぐ装備。アイテムはとってお
いて機会がくればためらわず使う。
スイッチなどの仕掛けに対する行動:明らかな罠と見抜けなけ
ればとりあえず作動させてみる。

実力はあってもただの魔法学校の生徒なので、実際のダンジョ
ン挑戦はこれが初めて。授業で罠などについての知識は持って
いても本当の意味で危険性が実感できていないく、慎重に行動
しているつもりでも抜けた行動をしてしまうという設定です。

今回の行動
室内を探索(床や壁、扉なども一通りチェック)⇒左の扉から
奥へすすむ。