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プリンセスブレイカーズ
ターン0 初期情報/クリスタ・マホロ・サナダ編  2010/02/05更新
「ひっ」
目の前に居並ぶゴロツキどもの顔色が変わる。
それも、辛うじて、少女の炎から逃れる事の出来た幸運な男達だけだ。
既に仲間の大半は、何だか良く分からない黒焦げの山となって、
アイリス・フォンブレイズの足下で、異臭を放ちながらピクピクと痙攣している。

「ば、爆炎のアイリス……」
顔面蒼白となったゴロツキのリーダーらしき男の口元から、
その二つ名が漏れる。
「あらあら、爆炎だなんて嫌ですわ」
その言葉とは裏腹に、アイリスの顔は嬉しそうにほころんでいた。

「くっ、に、逃げろぉぉぉ」
数分前の威勢はどこへやら、リーダーの男と生き残りの数人は、
転げまろびつ、街路の奥の細道へと逃げ込んでいく。


「全く迷惑な連中だ。通りの真ん中に、こんな粗大ゴミを残していきおって」
仲間から見捨てられた、哀れな黒焦げ男達の小山を見下ろし、
クリスタ・マホロ・サナダは、冷静な感想を口にする。
短い髪に怜悧な視線、そして漆黒の軍服が良く似合っている。
彼女こそが、その若さで帝国軍の魔法技術研究所の技術小将を務める
俊英だという事は、知る人ぞ知る衝撃の事実だった。

賭博の都に無数にある歓楽街の1つ。
たまたま見かければ、1人の年若い魔導師の少女が、
街のゴロツキどもに取り囲まれていた。
助けが必要かと思い割って入ったが、その必要は無かったようだった。
アイリスの魔法の腕は完璧に近く、複雑な詠唱が必要な炎の範囲魔法を
鮮やかな高速詠唱で繰り出したのだ。
その結果が、目の前の見るに堪えない、むさ苦しい男達の黒焦げ姿、
というわけだった。

「あの、先ほどはありがとうございます」
「いや、いらぬ助太刀だったようだな。出しゃばったようで、すまなかった」
丁寧に頭を下げるアイリスに、クリスタは軍人らしくキビキビと答える。
そもそも考えてみれば、こんな危険な街で立派に1人でやっていけるのだ。
アイリスが、相当の腕の持ち主である事は、当然の事ともいえた。

しかし、アイリスも、そんなクリスタの雰囲気から、ただならぬ物を感じている。
張りつめた緊張感と、鍛え上げられた技の気配。
そして、冷たい軍人口調の向こう側には、思いやりと誠意が見え隠れする。
「あの……よろしければ、お礼にお茶でも」
いつものように穏やかな口調で、クリスタを誘おうとするが、
「いや、せっかくのご好意だが、軍務中ゆえ、これで失礼する」
ピシリッと背筋をのばして、敬礼をすると去りゆくクリスタの背中を
アイリスは、少し残念そうに見送った。
(お友達になれれば、良かったのですが)

ここ賭博の都では、珍しくもない、そんな光景。
しかし、アイリスもクリスタも、互いが明日挑む
同じ賞金ダンジョンへの挑戦者である事を知る事はなかった。

2人は、まだ他人同士。

プリンセスブレイカーズ
ターン0/クリスタ・マホロ・サナダ編/ダンジョン内
翌朝。

「ふむ……」
ここは、地上に用意されていた転送門から、送られてきたダンジョン内部。
クリスタは、軍人らしい冷静さで慎重に周囲を分析する。

あたりは、一辺8メートルほどの長さをもつ石壁に囲まれた空間。
部屋の高さは3メートルほどだろうか。
薄暗い魔法照明で照らされている以外は、これといった特徴は見あたらなかった。

「魔力感知、罠の類は無いようだな」
とりあえず、構えていた魔法銃をおろし警戒をとく。
3方向の壁、北、東、西には、それぞれ1つづつ扉がある。
どうやら、このうちのどれか1つを通って、次の部屋へと移動しろ、
という事らしかった。

「ここは、どうする?」

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行動指定
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