「先ずはこの部屋の確認よね……」
先ずは此処がどの層であるか、どの位置であるか、そもそもフロアが安全であるのかどうか。
それを調べなくては話にならない。
「何もなければ此処を拠点にして、探査の手を進めたいけど…ふむ」
ざっとフロア内部を見渡してみる。
「扉は二つ……見た感じ特に特殊な物も仕掛けも無し。
(いつかのダンジョンにはドア・イミテーター(扉の擬態生物)やら
アサルトドアー(人食い扉)が一杯でしたからね〜…
用心するに越したことはないのだけれど…。)」
進むたびにしつこく仕掛けられていたそれらを爆破し、仲間に呆れられたのを思い出しながら、
長い杖…魔法の触媒であるロッドだ…を握りなおす。
「確か……音が軽ければ、向こう側が空洞になっている可能性があるんですよね。
…そゆ場所には隠し通路もある…と)」
何時だったか組んだ、生真面目なシーフの少女の言葉が蘇った。
「そういえばあの軍人さんも、随分生真面目な方でしたね…
一緒にお茶、してみたかったのですけど。」
そんな事を思いながら…こつ、こつ、こつ…杖先を使って壁を、床を、扉を、
耳を澄ませて反応を探るアイリスだった。
「ふむ……なら此処を一端の避難場所にして、と…」
軽くベルトポーチから羊皮紙とペンを取り出し、マッピングするアイリス。
「さてさて、じゃあどちらにしようかしら〜(ころんと杖を立てて倒す…東側の方へと倒れ)
…ん、こっちね♪」
扉に手をかけながら、次のフロアへと進んでいく。
その先にあったのは……
「おおっ、と」
男の声が響く。
扉を開けた先にいたのは、中肉中背の冒険者風の男。
男は、小狡そうな笑みを浮かべアイリスの全身を視線で値踏みすると、
こちらと同じ魔法の構えをとる。
その好戦的な気配に、アイリスは内心で溜息をつく。
(あらあら)
男の雰囲気からは、決して魔法が得意という様子は伝わってこない。
なのに、敢えてこちらと同じ魔法の準備に入るというのは、
彼女がよほど侮られているか、もしくは何か策があっての事なのだろうか?
アイリスもすかさずロッドを構えて、体勢を整える。
それを見た男は、嘲笑に近い笑顔で高らかに宣言する。
「俺の名はレオ、今からあんたを孕ませる男だ」
こちらの身体を何度も往復する視線は、
執拗に、彼女の胸のふくらみやヒップに絡みついてくる。
明らかに、アイリスの身体を孕ませる対象−母胎−として見ている証拠だった。
好戦的な気配に加えて、男は、その変態的な性欲を隠そうとしない。
戦いは避けられそうになかった。
アイリスは、男に向かってキツく言う。
「おイタはメッ…です。…覚悟してください?」
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