腰に下げたショートソード二本、身体のあちこちに隠した小型ナイフ、
支給されたマジックアイテムとオーブ、そして身嗜み。
「――よし、と。問題ないわね。さて……」
とりあえずオーブを集めることを目的として動こうと考えたミサ。
いくらあっても困るものではないだろう。
オーブを失ってしまった女の子を助けることもできるだろうし、賞金も増える。
この様子をどこかでモニタリングしている下卑た連中を残念がらせるのは面白そうだ、
と彼女はにやりと笑う。
しかし、今のところ目標になるようなものは何も無く、勘で動くより他が無い。
彼女の視界には扉が三つあるだけで、他には特に変わったものは見られない。
「どれにしようかしら……?」
とりあえず全部の扉を開放してみようかと、まずは西の扉を開け放つミサ。
次に、北、東と開けては見るが、残念ながら3つの先は、どれもここと同じ
陰鬱な石壁の姿が見えるばかりで、手がかりになりそうな物は無かった。
仕方なく彼女は、最後に開けた東側の扉をくぐってみる。
一歩前に進んでみると、音もなく背後の扉が閉まる。
振り返って、取っ手を押し引きしてみるが、反応は見られない。
どうやら、魔法的な力でロックがかかっているようだった。
仕方なく、ミサはそのまま前へと進んだ。
一見目には、最初の部屋と同じ作りの石壁に囲まれた正方形の空間が広がっている。
ただし、さっきと違うのは、そこに先客の姿があった事だ。
目の前に居たのは、ピシリと背筋ののびた軍服姿の若い女。
マジックアイテムの情報によると、彼女の名はクリスタ・マホロ・サナダ。
自分と同じ、このダンジョンへの挑戦者のはずだった。
その理知的で怜悧な視線は、ミサの興味を惹くが、全体から漂う硬質な空気は、
誰をも近づけぬ、冷たい壁を感じさせる。
クリスタとは、軽く挨拶をかわすが、それ以上の情報を交換する事は出来なかった。
室内には、東西南北の4方向に扉が設けられている。
ただし、ミサが今はいってきた西側の扉は、既にロックされている。
選べるのは、北、東、南の3方向だった。
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