■ HRゲーム難民スレッド ■ 2006年9月10日 掲載
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この作品は、暴れ猫さんによってHRゲーム掲示板内の「HR SSスレッド」に投稿された作品を掲載させてもらいました。
掲載の都合上、作者さんのコメント等がカットされています。オリジナル版については「HR SSスレッド」をご覧ください。



あらすじ
 アクティブから発売された「DISCIPLINE」で話題を集めた強制妊娠シチュエーションを暴れ猫さんが、完全SS化された作品です。  →作品情報
 学園のヒロイン「音川沙織」は、横暴の限りを尽くす理事長の妹「森本レオナ」に捕らえられ…



 作:暴れ猫

「それじぁ桃音さん、彼女にたっぷりと排卵誘発剤を投与してあげて」
「はいな」
 桃音はレオナの指示に従い、鞄から注射器と透明な液体の入った小さな子ビンを取り出す。レオナは早見が拘束されている椅子の裏に回ると、手錠とロープを外す。
「あなたが音川さんのことを考えるなら、ちゃんとあなたの精子が受精するように祈ってあげることね」
 高ぶった感受を抑えきれないのか、その言葉のトーンは高く保健室に響く。それでもその声は早見には届いておらず、速見はただ呆然と桃音の作業を黙って見ているだけだった。
 桃音は子ビンの蓋を取ると、注射器の先を丹念に消毒してから子ビンの中身をシリンダーに吸わせる。
「どっちの子を産むのですかぁ〜?」
 にたにたと笑いながら針を音川の腕に差し込み、シリンダーの中身を抽入した。
「はい」
 レオナは早見の前に割り箸をさしだす。
「クスコの中身、デブオタ君の精子が下の方に沈んでいますわ。これで混ぜてあげないと、早見君の精子、子宮に入る前にデブオタ君の方が受精しちゃくかも」

 心ここに在らず。今までならば怒りに任せて割り箸を奪ったかもしれない。
しかし早見は静かに割り箸を受け取ると、ふらふらとした足取りで音川に近づき、クスコの中に割り箸を入れる。
 クスコの内側を滑らせるように割り箸でクスコの中を掻き回す。入りきらなくて精液が外に溢れ出していたところで強引に掻き回すと、更に外に溢れて音川の陰毛を白く染めていく。
「こんなんじゃ………ダメだ」
 早見は割り箸を投げ捨てると、クスコの中に指を突っ込み精液を掻き出し始めた。
「ちょっとあなた、そこまでは許してないわよ!!」
 眉をしかめてレオナの怒り声が早見の背中にぶち当てられる。しかしそれもお構いなしに掻き出し、そうしながらもズボンのジッパーを下げてペニスをしごき始める。
「外に全部出して自分の出したものでも入れるつもり!?」
 レオナは早見の肩を掴むと、桃音と一緒に音川から引き剥がし、再び椅子に固定する。
「気が変わったわ」

レオナは睨み殺すかのように早見を見た。再び冷凍庫の扉を開けると、精液を冷凍保存してある容器その物を取り出す。その数3つ。蓋を開けると、無造作に試験管を取りだし、次々とぬるま湯につけていく。
「桃音さん。排卵誘発剤、後どれくらい残っていますの?」
「まだまだ沢山在りますよぉ」
「そうね……あと2本、音川さんに打ってあげて」
 レオナは笑いながら指示し、解凍の済んだ試験管から中身をビーカーに移していく。それを見ながら早見に正常な心が戻ってくる。
「あっ、な、なにをするつもりだ!」
「無差別爆撃とでも言うべきかしら? 最低ランクの男の精液、全てを注いで上げる」
 順次解凍の終わった精液をビーカーに注ぐ。開いた部分には、容器から取り出した試験管をいれ、鍋の傍らには空になった試験管が山積みになっていく。
「これで最後よ」
 最後の試験管を傾け、中身をビーカーに落す。1000mlの線は越えており、レオナはそれをガラス棒で掻き混ぜる。ある程度混ざり合うと奥のベッドを隠すカーテンを開いた。
「なんだよ、それ……」

 そこにあるのはベッドでなく、初めて見る機械だった。レオナは何も言わずにビーカーの中身を機械の中に注ぐと緑のボタンを押した。
「あなたの取った勝手な行動、その責任は音川さんにとって頂きますわ」
 機械が稼動音と供に動き出す。その振動は窓際の窓をカタカタと鳴らしている。
「責任は俺に在る!! これ以上音川に酷い事はしないでくれ!! たのむっ!!!」
 その機械がなんなのかは知らない。知らないからこそ更にひどい仕打ちがあると確信する。
「責任を誰に取らせるかは私が決めることですわ。あなたは黙って見ていなさい」
 レオナは早見の後ろに立つと、ロープを咥えさせる。ぎゅっと縛るともはや早見には動くことも叫ぶこともできなくなった。
「睨んだところで、一体何が変わるとでもいうのかしら?」
 ものすごい形相でレオナを睨みつけるも、なにも出来ない早見にレオナは侮蔑の眼差しを向ける。
「レオナ様、打ち終わりました。それから彼女、気がついたみたいです」
「まぁ、ちょうど良いタイミングですわ」

 早見も音川を見ると、涙を浮かべながら現状を知ろうとする。まだ動けない自分と拘束されている早見の姿に、まだ開放されてないと知った。
「これ以上…何を……」
 音川の視界を遮るように、間にレオナが立ちはだかる。
「あなたが気を失ってる間にね、早見君、クスコの中身を掻き出しちゃったのよ。せっかく聖母になれるチャンスを与えたというのに、もったいないことしてくれたでしょ、彼」
 冷酷なレオナの笑み。
「でも大丈夫。私が見事に聖母にさせてあげるから……」
 レオナは桃音の鞄から注射器を取り出すと、5本ほど持って怪しい機械の前に立つ。
「あなたも、心から喜んでね。音川さんが聖母になる瞬間に立ち会うことを許されたことに」
 冷たい視線と背筋のゾっとする言葉は早見に向けられた。レオナは機械から小さなポリタンクを取り出すと、中身をビーカーに注ぐ。正体不明の透明な液体がボチョボチョとビーカーに溜まっていく。持ち出した注射器のシリンダー目一杯まで吸いこませ、敷いたタオルの上においていく。

少々もったいないですが、まあ良いですわ、これくらい」
 ビーカーの中に残った透明な液体は、そのまま保健室備え付けの洗面台から捨てられた。それでも注射器5本分の液体は確保されている。5本の注射器をタオルで包み、音川の腰元に置いた。一本を持つと、音川に見せるように顔の前に針を持ってくる。
「桃音さん、彼女の口を開けさせて」
 すっと近づいた桃音が音川の両頬をつまみ、口が開いたのを確認するとピストンを少しだけ押して透明な液体を口の中に落した。
「お味はいかがかしら?」
「何よ……これ」
 強張った表情で怯える。味のない液体。しかし液体の正体が分からないからこそ、恐怖がより増大する。
「あの機械ね、遠心分離機なのよ。もっとも、ただ精液から精子だけを抽出するだけの精度しかないですけど」
 エイズに感染した精子と、感染してない精子とを分けるだけの力はない、とでもいうようだった。精子を抽出するだけでも極めて極悪な機械である。
「あ………悪魔よ、あなた!!」

「あらあら、親切にしてあげてるのに悪魔呼ばりするのね、あなたって人は」
 好きなだけ叫びなさいとでもいうように笑いを浮かべ、開かれたクスコの方に視線を移す。
「ほんと、もったいないわ」
 クスコの中を覗くと、底に残る精液の残量を確認する。レオナは桃音に膣内の洗浄するように指示すると、ホースを持ちだしクスコの中にぬるま湯を流し込んだ。すぐにクスコからぬるま湯が溢れだし、音川の腰回り一帯は水浸しになる。
「子宮の入り口がばっちりね」
 洗浄の終わった膣内を覗きこみ、綺麗に洗われたのを確認する。
「やめてっ!!」
「動かないでね」
 レオナは針を天井に向けると、中身を少しだけ出す。
「純度100%の精子。あなたの子宮の中に直接入れてあげるわ。排卵誘発剤を3本も打ってあるし、確実に聖母になれるわよ」

 レオナが何をするかは既に音川は察している。レオナはそれを知っているからこそわざと説明し、針から精子が流れ出るのを見せる。
「下手に暴れると、子宮の壁に突き刺しちゃうかもね」
 子宮は、ちょっと引っ掻かれただけでも緊急手術を受けなければならないほどに弱い臓器である。レオナの性格からして、たとえ子宮を傷つけたとしても病院には行かせて貰えない。
「なんで…なんでこんなことを……」
「あら、それは簡単よ。あそこの薄汚い男が、聖母になるためのチャンスを無駄にしたから」
 音川から見れば救助行為であっても、無理やりにでも妊娠させようとするレオナには邪魔な、余計な行為でしかない。
「あなた、同じ寮に住んでたんだから連帯責任として聖母になる瞬間を見せて頂戴ね」
 ゆっくりと針をクスコの中に落としていく。
「それだけはっ! お願い、なんでもいう事聞くからっ!」
「さっきもそれ言ってたわね。あなたは優秀だと思ってたけど思い込みだったかしら?」

 ニュッ………。
 針が子宮の穴に包まれる。
「答えは同じよ………。妊娠しなさい」
「お願いよぉっ! もう絶対に反抗しないっ! 奴隷にだってなるっ! だからっ、だから許してっ!!!」
「…………ふっ」
 針が子宮にはいって2ミリか3ミリのところで止める。
「さぁ、後はピストンを押し出しだけですわ……」
 レオナの中で高まる喜び。狂気に包まれた顔に、流石の桃音も表情が引きつる。
「いやっ!! 押さないでっ!! …でっ…出てるっ?………出てるっ!!」
 シュゥゥゥ!
 ピストンに押された精子は、迷うことなくシリンダーから針に流れ、先端から勢い良く子宮の奥に向かって放たれた。
「ちゃんと受精するのよ」
 子宮の奥に当たった精子は、細かく飛び散りながら子宮の隅々にばら撒かれる。

「あ……あ……い………嫌………嫌よ……こ…こんな……の……」
 身体の奥に精子の注入を感じ、瞳孔は大きく、カタカタと身体が震える。白い天井を背景に、泳ぐ精子の姿が浮かび上がる。やがて大きな球体に辿りつくと、一斉に飛びかかり、頭を球体に押しつける。球体に波紋が起こると精子は全て動かなくなり、粉々に砕け散った。そして球体の中から心臓の鼓動が聞こえ、人の子の姿が徐々に浮かんでくる。
「もぅいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 無造作にビーカーにぶち込まれた精液。誰のものかも分からない邪悪な体液から取り出された精子。無常にもその生き物を抽入された自分。自分の卵子を求める凶悪な遺伝子。
「デキちゃう………赤ちゃんデキちゃう……………」
「当然よ。そうさせてるんだから」
 絶望に力を失った音川に、レオナは容赦なく2本目の注射器を手に取った。
「子宮の口がパクパク動いているわ。まだ足りないのね」
 ニュプ。
 穴に針を差し込むと、シリンダーに詰まる精子を子宮の中に押し出す。拒絶が胎内に当たる精子を感じ取り、身体をビクンと震わせる。

「はいはい、まだありますからねぇ」
 ニュプ。
 まるで赤子に母乳を与えているつもりなのか、3本目の針を子宮の口に入れるとピストンを押す。
「あ………あう……」
 暗闇に突き落とされた者のうめき声。
「4本目」
 レオナは嬉しそうに注射器を持ち、子宮の入り口を見る。
「もう………やめて………。そんなにいれなくても……あなたの思い通りになるわよ………」
「そう? でもまだ足りないってここは言ってるわ。子宮の口がパクパクしてる。排卵しちゃうからその前にもっと頂戴……ってね」
 ニュプゥ。
「いったい誰の子でしょうね」
 シュルルッ。
 子宮の中に強制排出される精子。ほぼ子宮全域を満たしても尚、空間を全て精子が埋め尽くすまで子宮単独のおねだりは止まらない。

 音川は力なく天井を見つめ、まるで死んでしったかのような青白い顔に、涙の線が太く流れている。
「これで何億の精子が入っちゃったのかしら?」
 ニュプン。
 最後の一本を子宮の口に咥えさせる。
「美味しく頂きなさい」
 ピストンをゆっくりと押していく。しかし半分押したくらいで手を止めた。
「あらやだ。精子が入り切らないみたい」
 針と子宮口の隙間から透明な液体が溢れ、クスコの底に溜まり始めていた。
「フフフフフ。文字どうり子宮が一杯になっちゃったわね、音川さん」
「うっ…………ううぅ……………ぐぅ……」
 なにも言えずに顔を背けて泣く。死にたいと思う気持ちと、殺してやりたい
という憎悪が激しく交差した。
「卵管も精子でギチギチね」
 ピストンを押しきり、空になった注射器をタオルの上に放り投げる。すぐに桃音が片付けに取りかかった。

「今晩中には聖母の誕生かしら?」
 クスコも取り外す。ぴたっと閉じた膣口から、チョロッと透明な液体が流れ出る。
「本当に失礼な彼よね。聖母になるという大切な儀式なのに、あそこをあんなに大きくして」
 怪訝そうな、それでも口元はなんとか笑いを堪えているような表情。
「感想を聞かせていただけるかしら?」
「人でなし…………」
 音川は小さな声で言葉を投げ捨てる。その目には絶望を、そして奥にはとても大きな憎しみを宿して。
「あら、残念だわ。感謝していただけないのでしたら、お腹の子が堕ろせなくなるまで地下室に住んでいただくわ」
 レオナは静かに早見に近づくと、口のロープを外した。
「お気に召しました? 聖なる儀式」
「ふざけるなっ!! お前は絶対に殺してやるっ!!!」
 早見の身に沸き起こった殺意の感情。獲物を狙う目つきとはいえないほどの恐ろしさを帯びる。
「殺すなんて野蛮な。でも私の力を持ってすれば、あなたを闇に葬り去るなんて簡単なことですわよ」

 死ぬならお前だと言わんばかりに、レオナの態度は変わらない。身動きできない状態でいくら威勢を張っても、逆にレオナを喜ばせるだけだというのは知っている。しかし心の奥に芽生えた殺意は大きくなり、感情に走らせるだけでであった。
「いつかあなたは神によって裁かれるわ。あなたは悪魔だから」
 小さくボソッと言った音川だったが、それは鮮明にレオナに届いていた。
「あなた、そんなになっても神を信じてるわけ? 神なんてこの世にはいないわ。いえ、例え神がいたとしても、私の前には平伏する」
 威圧するかのように音川の前に立つ。
「処女妊娠するからといって、あなたはマリアにでもなったつもりかしら?」
 レオナは桃音に取り巻きを呼ぶように指示し、新しい注射器に麻酔をいれると早見の腕を取る。
「そんなに自分の精子で受精させられないのが、お怒りの原因かしら?」
 針を早見の腕に突き刺し、麻酔薬を注入する。
「クッ……クソ……ま……まだ何か…を……」
 麻酔を打ち終わると、自分の鞄からファイルを取り出す。何かを選ぶように目を走らせているうちに早見の全身に麻酔の効果が現れ始め、口もうまく動かせなくなってきた。

「これよ、これ」
 開いたページを早見に見せるが、言葉をしゃべろうにも舌が回らない。崩れ落ちそうな頭を必死に上げてページを見ると、そこには数人の女生徒の名前が載っている。
「今この子達、社交倶楽部の部室にいますの。あと2日か3日で危険日の子達よ」
(なに!?)
「生殖本能を満たせない怒り、この子達で解消させていただくわ」
 不適な笑みを漏らす。ちょうどそこに、桃音に呼ばれた社交倶楽部の部員が入ってきた。
「音川さんは例の部屋に、彼は部室につれていって。桃音さんはこの部屋の掃除を」
 ベッドの脇においてある制服を音川に着せ、まるで犯人の移送のように数人が囲い、例の部屋と呼ばれた場所に強制連行される。その後で全身麻酔によって動けないでいる早見を2人の肩にかけ、レオナを先頭に保健室を出ていく。
「命の芽吹き、あぁ、なんて良い響きなの………」
 目を輝かせながら歩くレオナとは対象に、これが悪夢なら、さっさと目を覚ましてくれと心の中で祈る早見。悪夢という名の現実は、まだ終わらない。

 一方音川は、校舎の地下室に作られた鉄の扉の部屋に案内される。簡素ではあったが、少なくともベッドとトイレ、風呂は用意されている。一方的に音川を突き飛ばすように部屋の中に付き入れると、振り向いた時には厚いドアが閉まり、鍵がかかる音が響く。
「レオナ様の命令です。ここで大人しくしていて下さい。食事はこのドアの下から差し入れますので」
 この部屋唯一の窓は、ドアに付いている鉄格子仕様。そこから1人がぶっきらぼうに告げ、4人は退散していく。鉄格子を掴んだ時には既に覗ける範囲には誰も見ることができず、歩き去る靴の音が、コンクリートに重く反射していた。
「早見君………」
 ベッドに横たわり、希望の失せた目で黒い天井を見つめ続ける。自分の置かれた状況は、明確な形での監禁状態。レオナは否応無しに子供を産ませるつもりでいる。時計のない部屋は静かな孤島で、どれほど経ったのか、カチャンという音がドアから聞こえる。ドアの下が横長に開閉する仕組みのようで、そこから食事が押し込まれていた。
「食べ終わったら通路の方に出しておいて下さい。それと読み物として書類も持ってきてあるので、気が向いたら目を通しておいてください」

 何も食べる気はしない音川は、食事には一切手をつけずに通路に押し出す。書類だけは手に取りパラパラと捲ってはみたが、すぐにくしゃくしゃに丸め、食事を引き戻しご飯の真ん中にぐりっとねじ込んだ。そしてまた通路に、今度は足で蹴り飛ばす。
 書類は精子バンクのリスト。更に言えば、お腹の子の父親候補者リストであった。この屈辱に音川はベッドに伏せ、声を殺し、いつしか深い眠りに落ちていった。

「………ん……朝………?」
 再び目を開けたのは、何やら明るい光を感じ取った時だった。ガバッと顔を上げると、目の前にあるのはコンクリートの壁。今再び監禁状態に置かれていることを理解する。
「はっ!?」
 ここに入るとすれば、レオナしか考えられない。それほどまでに光を後ろに感じた。伏せていた身体を反転させ上半身を起こすと、レオナとは違う別人が立っているらしく感じる。光が強く、その光の中に人が立っている。
「誰?」

 眩しさから逃れるように手を掲げて光を遮ると、徐々に光の度合いが低くなる。手を退かすと、そこには知らない誰かが立っていた。
「あ…あなたは………翼?」
 その人物の後ろに見えるのは白い翼。金色の髪は肩まで伸び、野花を繋いだ草冠を頭に被っている。白い布を身体に纏い、その腰には一本の長剣が挿してあった。鞘の一部分が光っていて、そこを見れば百合の花が彫ってある。
「ま……まさ………か………」
 音川は手を口に当て、身体をこおばらせる。自分でもすぐ分かるほどに、背筋が凍りついたかのような冷たさが走る。
『恐れることはない、音川。あなたの願いは聞き入れられた』
 目の前に立つものは静かに告げる。
「ねが……い?」
 目の前に立つ者。それが何者なのかを悟った音川は、絶望に暮れる。
『あなたは神の恵みを頂いた。あなたは身篭り、男の子を産む』
 ビクン!
 死の宣告よりも聞きたくなかった言葉に、音川の身体が拒絶を表す。
「なぜ………あなたが現れるのです?」
 面向かってその人物の顔を見れない。なぜなら涙が今まで以上に溢れ、嗚咽を抑えれるのが不思議なくらいだったからであった。

『私の名はガブリエル。神の前に立つ者。あなたに話しかけて、この喜ばしい知らせを伝えるために遣わされたものである』
 ガブリエルは剣を音川の頭上に掲げ、光走らせる。
『音川よ。神の祝福を』
 眩い光が部屋を埋め尽くし、その光りが消えると音川独りになっていた。
「願ってなんか………ないわよ………」
 大天使ガブリエル。またの名を受胎告知の天使。その祝福の光は闇の光となり、音川を包む。暗闇が晴れる事は………ない。


作品への感想等をHR SSスレッドにてお待ちしております。


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