「それじゃあ、はりきって行こー♪」
セリア・ルーンワークは、周囲を見回し考える。
扉の位置は北、東、西…っと。
たぶん、どれかを選んだら後戻りできないんだろうし…、
進む前にそれぞれの扉や周りの壁を確認しないとね。
何か特徴のあるシンボルみたいなものがあればそっちに進んでみようかな。
そうだ、念のため南の壁も調べてみようっと。
もしかすると隠し扉があるかもしれないしねっ。
数分後、
「う〜ん」
やっぱり隠し通路は無し、これは予想通り。
でも、扉にもシンボルも何も無し。
「仕方ないし、こっちでいいかな?」
セリアは、気軽な調子で東側の扉を開いた。
扉の先に見えたのも、さっきまでの部屋と同じ、
無機質な石壁に囲まれた、正方形の空間。
しかし、先ほどまでとは違い、どうやらこの部屋には、
先客が居たようだった。
背の低い肥満した禿げ男。
しかも、裾の破れた皮ジャンに、厚手の皮ジーンズという
バイオレンスなファッションに身を包んでいる。
こんな地の底の迷宮では、あまり出会いたくはないタイプだった。
「おや、これは可愛いお嬢さんだ」
しかし、男はその外見とは予想外に丁寧な言葉遣いで話しかけてくる。
「私の名前は、ダレ・トク。ご覧のように冒険者です。
お見受けする所、あなたも?」
そう問われて、セリアもあわてて挨拶をかえす。
「はじめまして、セリア・ルーンワークです」
数分後、思いの外、打ち解けた会話を交わし、
セリアは、ダレが見た目ほど悪い人物ではない事を知る。
(良かった♪ 悪い人じゃなかったみたい)
「セリアさん、そういえば、これをどうぞ」
そう微笑むと、ダレは荷物の中から輝くオーブを取り出す。
「聞けば、まだダンジョンに来られたばかりとか、
ご挨拶も兼ねて差し上げますよ」
「あ、でも、こんな貴重な物を……」
恐縮する彼女に、ダレは自信ありげに荷物の中を示す。
「?」
彼女がそこを覗くと、薄汚れた袋の中には、
予想外にも、輝くオーブが幾つも収められている。
「わっ! ダレさんって、凄いんですね」
「はは、私はここも長いですからね、オーブにも困ってないんですよ。
ささ、受け取ってください」
「ありがとうございます。これで2個目のオーブ、ゲットです♪」
嬉しそうに笑うセリアの姿に、ダレも目を細めていた。
「どうですか、セリアさん、よろしければしならく一緒に冒険しませんか?」
ダレは、気軽にセリアを誘ってくれる。
(とっても良さそうな人だけど、どうしようかな?)
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