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プリンセスブレイカーズ
ターン2/ダンジョン内/レオ=ハイブリッジ編  2010/02/19更新
「俺の名はレオ、今からあんたを孕ませる男だ」

立ち塞がった変態男レオを前にアイリスは思考する。
(随分な自信ですね……
最も、人を変な目で見た上、堂々とあんな宣言するなんて……殿方としては最低ですよ?
……この調子だと同じような事を他の女性にも言いそうですからね。
――なら、一度懲らしめて差し上げます。……覚悟、してくださいね?)

自信満々に自分と同じ魔法の構えをとる男に向けて、
アイリスは厳かに宣告する。

「おイタはメッ…です。…覚悟してください?――《噴火―ボルガノン―》」

つぶやき終わった瞬間、レオの足元の地面が爆発し、火柱が吹き上がる。
(何を考えているかは知りませんが…唯の無謀であればそれでよし、
仮にフェイクだとしても…罠諸共壊すまでです…!)
おまけですよっ…《火炎弾―ファイアボール―》!」
追撃とばかりに高速詠唱化され、瞬時に汲み上げられた魔導式と共に炎の礫が飛び…
着弾した瞬間、大きな爆発が起きる。
爆炎の二つ名が伊達ではないことを示すような、大掛かりな呪文の連発。

「うぉぉおおおおお! 熱ちぃぃぃっ、アチチチチ」
これだけの炎で巻かれたのだ、本気で熱いのだろう。
レオは、目尻に涙を浮かべながら、舞い踊る爆炎の前で転げ回る。
(くっ、ただの魔法学校を出たてのお嬢ちゃんかと思ったら……)
アイリスに屈辱にまみれた敗北を与えるために、
敢えて彼女の得意とする魔法で勝負を挑むつもりだったが、
とても自分の及ぶ所ではないと悟ったレオは、すかさず本来の戦闘スタイルである、
剣と魔法を使い分ける、ハイブリッドに移行する。

決して悪くはない選択だったが、
勢いに乗ったアイリスの前では、いささか遅すぎた。
次々と襲い来る魔法の連発に、防戦に手一杯で、とても反撃に移るような隙はない。
(チッ、ここは撤退するしかねえ)

爆炎の二つ名が伊達ではないことを示すような、大掛かりな呪文の連発。
(これで懲りてくれればいいけど……いえ、懲りるまで容赦する気はないですけどね……。)
炎を操り、相手を追い回しながらアイリスは小さく小さく、ため息をつく。

数分後、あたりにくすぶる煙と、焦げた臭いの中。
「く、くそ……」
レオは、肩で息をしながら立っている。
そんな彼に向かってアイリスは、
「…さて、反省しました? これからはあんなお誘いの仕方はしちゃいけませんよ?」
相手に歩み寄り、めっ、と人差し指を立てる。
「今回は見逃して差し上げますけど……酷い事はダメなんですから、ね?
……もし、それでも悪いことをしたりするようなら……」
しゅぼっ、と立てた人差し指に炎が灯る。
「今度は黒焦げにしちゃいますから…ね?」
にっこり笑っているアイリスの表情。
しかしその背後に怖いものが見えるのは、気のせいでもなんでもないだろう……。

「さすが……未来の、俺の嫁だな」
ちなみに、レオにとって嫁というのは、自分の子を産ます女という程度の意味であり、
特に結婚等、深い考えがあるわけではない。
「あらあら、まだ言いますの?」
レオの減らず口に、アイリスが再び詠唱体勢に入ろうとした時、
「じゃあ、あばよ!」
そう叫んで、身を翻すと背後にあった北向きの扉から隣室へと転がり込んだ。


「くっ」
開いた扉の先で、もんどり打つレオ。
全身のあちこちからはブスブスと煙があがり、我ながら酷い有様だった。
ふと視線をあげると、この部屋には先客がある。
西の扉の前には、獣の毛皮を着た少女が地面に倒れ伏し、その上を
小さな妖精がまとわりついている。
野生児の少女は、頬を上気させながら瞳を恨ませ、明らかに普通の状態ではない。
さらに、東の扉の前に、むっちりとした身体つきの女戦士の姿がある。
(へへっ、ここも女ばかりとは、天国だな)
心の中では、既に敗北から立ち直り、気力を取り戻しつつあるレオだったが。

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所持アイテム
オーブ…1個