通常の人間なら、とても気づかなかったであろう気配。
しかし、野生児として森で磨かれたルフィアの感覚は、接近する危機を感知していた。
「シルエ!」
叫びながら、転がるように振り仰ぎ、服の下に隠していた短剣を手にする。
「ルフィア!」
同時に、シルエも風のつぶてを繰り出す。
しかし、野生児の少女は、視界に“敵”を捉える事ができない。
同時に、シルエのつぶても、その黒い影を逃す。
木陰から飛び出した“敵”は、あまりにも小さく早すぎたのだ。
2人の常人離れした動体視力だけが、かろうじてその正体を追いすがる。
それは“豆蚊”と呼ばれる、このダンジョンにだけ生息する
体長5センチほどの蚊に良く似た黒い昆虫だった。
虫としては、異様なサイズのそれがルフィアの股間にむかって飛び込んでくる。
「こ、こらーーー!」
少女は本能的な危機を感じて、脚を閉じようとする。
だが、豆蚊の速度にルフィアの防衛は間に合わない。
「あっ、痛っーーー」
密室のジャングルに、少女の悲痛な叫びが響き渡る。
実際には、それは痛みと言うよりは、痒みにも近い感覚だったが、
ルフィアの語彙には、その感覚を表す言葉がなかった。
「ルフィアーーー! 大丈夫!?」
慌てて、かけつけてくるシルエ。
「あっ! くぅん! お、お股がジンジンするぅ!」
頬を上気させ、すでにろれつの回らなくなりはじめてるルフィア。
その股の間にシルエは急いで接近する。
「わっ!」
下着を身につけていない野生児の少女の下半身。
その下腹部のスリット上端からは、なにか肉豆のような異様な器官が
プクリと飛び出している。
シルエに十分な性知識があれば、それがルフィアのクリトリスであろう事は
容易に察せただろうが、森を出たばかりの妖精には荷が勝ちすぎた。
「シルエ、お股おかしいよ、ジンジンがとまらなくて……」
息を荒げながら、瞳をうるませ訴えるルフィアは、そのまま本能の命じるままに、
股間にむかって手を伸ばすと……たどたどしく自らの女性器を慰め始める。
「うわーーー、ルフィアなにやってんの!?」
「わかんない、わかんないよ、でも……こうしなきゃ……ああっ」
生まれて初めて、メスとしての疼きを訴え始めたルフィアの肉体。
ただ本能の命じるままに、少女は自らの中指を股間の合わせ目に沈み込ませると……
「あっ! あああっーーー」
爆発するような快感が下腹部から溢れ出し、下半身がガクガクと痙攣する。
肥大した肉芽には、怖くて触れる事が出来ない。
それでも、突き上がる欲望のままに、人差し指、薬指と、つぎつぎと自らの肉体に
それらを沈めかき回すと、至福の絶頂が連続して襲いくる。
これまでのルフィアからは想像もつかない、夢中になって股間をかき混ぜながら、
鳴き声をあげる姿、思いもよらぬ友人の痴態に、ただシルエは仰天する事しかできない。
「ルフィア! ルフィア! し、死んじゃうの!? やだよ! そんなのやだよー!」
「ああっん! シルエ……見ないでぇ」
「!?」
「わ、かんないっけど、ああっん……恥ずかしくて……みないで……」
自らの行為の意味は理解できないながらも、ルフィアの心の内には、
猛烈な羞恥と罪悪感がわき上がってくる。
さらに、それを友人である妖精の少女に見られているかと思うと、もはや言葉には
ならない感情で、胸の中がいっぱいになっていく。
(ダメなのに……止まらないようぅっ!)
どれほどの時が経っただろうか、ルフィアは下腹部からおびただしい量の粘液を
垂らしながら、荒い息をついて地面に横たわっている。
「ルフィア! ルフィア!」
シルエは、ただおろおろして周囲を飛び回る事しかできない。
それでも、野生児の少女は、もぞもぞと動き始める。
「んっ、ああっ」
「だ、大丈夫!?」
「う、うん……なんとか……」
まだ下腹部の疼きは収まらず、お腹の内からジンジンとした疼痛が響いてくるが、
さっきほどではなかった。
なんとか立ち上がると、よろよろと歩き出す。
「動いちゃダメだよ!」
「でも、ここに……いちゃ……」
また、あの虫に襲われるかもしれない。
そうなれば、次に自分の身体がどうなってしまうのか、想像もつかなかった。
ルフィアは、もつれるような足取りで次の扉を目指す。
荒い息をつきながら、開いた扉の先。
数歩あるいたところで、またもいきなり下腹部から強烈な疼きの発作が襲ってくる。
「んくっ!」
ルフィアは、悲鳴に近い喘ぎをあげると、その場に崩れ落ちる。
「ルフィア! しっかりして!」
耳元に響くシルエの声。
(お股が熱いの! さっきみたいに……こすりたい! ううん、誰かにこすられたいの!)
股間を刺激してくれる何かを痛いほど待ちわびるけど、さっきのように
自分でしてしまうのは、死にたいほど恥ずかしい事のようにも思えてしまう。
その時、部屋の北側の扉が開いて、がっちりした女戦士風の冒険者が現れる。
背はそれほど高くはないが、全体にむっちりとした身体つきをしている。
彼女は、床に崩れるルフィアとその上を飛び回るシルエの姿に、驚愕の表情を浮かべ
こちらに近付いてこようとしたが、そこにさらに第3の訪問者が現れる。
今度は南側の扉が勢いよく開き、そこから1人の男が転がりこんでくる。
あれは火傷だろうか? 衣服のあちこちから、ブスブスと煙が上がり、
明らかに手負いの様子で呻き声をあげる。
だが、ルフィアにもシルエにも、とてもその男にまで注意を回している余裕はなかった。
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