「まったく困った変態さんでしたわね。
とはいえ、ちょっと連発しすぎたかしら…」
軽く身を休めるようにその場にハンカチを敷いて座りつつ…
次のルートをどっちにするかでアイリスは決めかねていた。
部屋の探索は……しても意味ないだろう。…というより、
先ほどの大暴れでも何か起きた様子が無かったのだ。
何かあったとしても多分焦げて使い物にならなくなっている可能性が高い。
「……このルートはさっき逃げた変態さんが鍵をかけちゃったからいけないし…
ん〜……」
残るルートは二つ。東か、南かだ。
「……お弁当でも食べながら決めましょうか。」
く〜きゅるる〜、と小さくお腹が鳴る。…魔法だって使えば消耗するし、
お腹だってすくのである。
「ん〜……」
入る前に買い込んだサンドイッチ(保存食とは別である、念のため)を
ぱくりと食べ終わりつつ、思案する。
とりあえず手ごろな探索結果と共に地上へは戻りたいが…
やはり一人だとどうしても難しい。
「(せめて剣士の方と…洞察力に優れたシーフの方でも
仲間に出来れば良いのですけどねぇ…)」
おまけに摘んだタマゴサンドの味を堪能した後、小さく息を吐く。
先ほどのレオのような輩と遭遇することとてありえる。
…信頼の置ける人でもいれば良いが…
『あんた、騙され易いんだからちゃんと人は見なよ?
こゆ稼業してると色々あの手この手猫の手騙し手使ってくる輩も多いからさ。』
これも自分にダンジョン探索の基本を教えてくれたシーフの少女の談だった。
……訳あって暫くは離れているが…今頃どうしているだろうか。
「(もう、クーヤの言うほど騙されることはない……はず、ですけど、多分……
…まぁ、今は無いもの…もとい、ない人ねだりしても仕方ありませんか…)…ぅ。」
ふと、回想にふけっていたアイリスの顔がしかめられ、手が止まる。
「この……ピクルス……にがぁい……」
涙目になりながらも飲み込んだが……次からはこのピクルスサンドイッチだけは
買うまいと決めたアイリスだった。
――最も、冒険者に次、と言う言葉は少々縁遠いものかもしれなかったが。
「ふ、ぅ……ご馳走様でした…。」
ぱっぱっ、と僅かに零れたパンくずを払い、ハンカチを拾って立ち上がる。
休息は十分、お腹も適度に満たされて、準備は万端。
「さて、と…じゃあ今度は…」
そうアイリスが思考した時だった。
優れた魔術師であるが故に、魔力にも敏感であるアイリスだからこそ
感知できたわずかな気配。
やがて、それは大きな魔力の渦になるとダンジョンの壁面を伝って……
(ん〜? これは嫌な気配かしら?)
彼女が戦闘態勢をとると同時に、部屋が突然の闇に包まれる。
それと同時に、
「!?」
突如、一方の壁が明るく輝くと、そこにマライズによる映像が映しだされる。
映し出されている場所は、ふたたびダンジョンの内部だった。
怪しげな台座からあふれだした、おびただしい数の触手に
銀髪のエルフ−シルヴィア−が捕らわれている。
その神話の世界から切り出されたような、美しい少女の姿が
おぞましい肉管とのコントラストに無惨さを増す。
さらに、幾本の触手が掲げるのが、黒い貞操帯のようなものだと察すると、
アイリスの瞳に、さっと怒りの炎が灯る。
そう、ただの貞操帯ではなかった。
股間には、クスコと呼ばれる金属製の医療器具がとりつけられている。
それも、2つも。
その禍々しい輝きに気づいたエルフの顔色がかわる。
「ま、まさか、それをわたしに!?」
銀髪を振り乱して暴れる彼女の下半身へと触手が殺到する。
ビリリッ、と繊維の断たれる音が甲高く室内に響き渡る。
ミニスカートをボロボロにされると、触手達は容赦なく下着まで引き裂いてしまう。
触手達は、黒い貞操帯をエルフの無防備な下半身へと近づけていく。
もはやこのトラップの意図する所は明白だった。
「やめろ、近づけるな! そんなっ! あああっ」
映像の中、シルヴィアは死に物狂いで抵抗をつづけている。
しかし、ついに銀髪のエルフ少女の下半身に、そのおぞましい貞操帯
−呪いの逆貞操帯−が無理矢理、装備されてしまう。
「んっ くうっ」
エルフの喉元から、苦痛と同時に奇妙に艶を帯びた悲鳴が漏れる。
理性の拒絶とは裏腹に、シルヴィアの下半身は、あの鈍い金属の光を見た瞬間から、
ねっとりとした蜜の分泌を開始していた。
そして、その小さな膣口は、卑猥な水音をたてながら、予想外にスムーズに
下腹部の奥底へとクスコを飲み込んでいく。
「あっ ああっ」
触手に支えられたまま、ガクガクと前後に揺れる腰。
やがて2つのクスコは、膣とアヌスにぴったりと収まると、
カチンと小さな金属音を響かせて、自動的にそこを開口させていく。
「や、やめ……ろ……んんっ」
久しく男根を受け入れていなかったメス膣が、こんな無骨な金属器機にさえ、
過敏に反応し、切ない疼きを伝えてくる。
加えて、膣とアヌス、女性にとって最も大切で恥ずかしい部分を、
こんな屈辱的な方法で強制開口されてしまった恥辱に全身が震える。
切なく悶え鳴き声をあげる、可憐なエルフの痴態に満足したのか、
呪われた貞操帯をエルフの少女の身体に完全に固定し終えた触手達は、
もと居た台座の中へと帰っていく。
数分後、室内には、荒い呼吸と共に台座に手をつき上半身を預け、
その女の弱点への責めに、幼い肢体をビクビクと痙攣させる
エルフの姿を映しだしたまま、唐突にマライズは消え去った。
「……最低、です……ね」
アイリスは、即座にあのおぞましい映像が、このダンジョンのどこからで
繰り広げられた陵辱劇のマライズ中継である事を察した。
そしておそらく、それが地上の街にまで届いているであろう事も。
普段、決して何にも激する事のない彼女が、ただ静かに発する怒気は、
もし見る者がいれば、蒼い炎となって彼女の全身を覆っていただろう。
とはいえ、
いつまでも、この部屋にとどまっているわけにもいかなかった。
今はあった出来事を記憶の中だけに刻み、激情を静かに胸の中に沈め、
普段の自分を取り戻す時。
「さて、つぎは……どちらに進みましょうか?」
アイリスが選んだ方向は東。
気軽に扉を開いた先に、意外な光景が広がっていた。
「痛い、痛いよぉぉぉ」
「お姉さんたすけてぇぇぇ」
「このままじゃ、殺されちゃうよぉぉぉ」
ボロボロになった少年達が、つぎつぎアイリスめがけて駆け寄ってくる。
その数、20人近くだろうか?
どの少年も、ボロボロの身なりをして、そして疲れきった表情をしていた。
見れば、少年達の背後に見えるのは、小柄な魔法使いの少女。
アイリス自身も、決して背の高い方ではなかったが、
その彼女よりもさらに背が低く、スレンダーな体型をしている。
少女の全身からは、強い魔力の気配が立ち上り、
少年達の身に、ただならぬ危機が迫っている事は明白だった。
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